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  • 2008.12.16 Tuesday
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サラリーマン大増税の嘘を暴く

JUGEMテーマ:経済全般

続いて同じく菊池英博教授が文藝春秋2006年3月号に発表した論文をご紹介します。長いのでいくつかに分けて紹介します。

※こちらのサイトから転記させていただきました。
PC50日記
日暮れて途遠し 

サラリーマン大増税の嘘を暴く
財務省が喧伝する「財政危機」宣伝に騙されるな  

昨年九月の総選挙で与党自民党は、「(サラリーマン)増税はしない」と明言していた。ところが選挙で予想外の大勝をしたとたん、財務大臣が消費税の引き上げに言及し、政府も手のひらを返したように増税路線を走り始めた。

マスメディア(主としてテレビ、新聞)まで反対するどころか、連日のように、「日本は財政危機だ]「増税しかない」と報じている。そのため多くの国民はすっかりマインド・コントロールにかけられ増税やむなし」と思っているように見うけられる。

日本は本当に財政危機なのか、本当に増税は必要なのか。

 私はここ数年、毎年ニューヨークやワシントンに行き、多くの米国の要人と日米の経済について意見交換しているが、少なくとも彼らには、日本が財政危機だという認識はない。

むしろ、ここ二、三年、彼らは私に、「日本が米国債を買ってくれるからそれを元手にアメリカは減税ができ、経済が回復している。日本は対外的に債権国であって自分のカネで滅税ができるのに、どうして減税して需要を喚起しないのか。そうすれば税収が伸びて財政赤字は解消するではないか」と訊ねてくるくらいだ。

 また東アジアの友人も、「日本は世界最大の金持ち国だ、自分のために自分のカネを使えば、景気がよくなり税収が増えるではないか」と忠告してくれる。

 世界の債券市場において、日本国債は優良銘柄として取引されており、日本の財政が危うくなるかもしれないなどという危機感などどこにもない。日本政府が財政危機を煽る一方、アメリカなど先進国の首脳はそう思っていない。一体どっちが正しいのだろうか。

JUGEMテーマ:政治



日本政府によって日本国民が騙されている

答えは一つ。日本政府によって日本国民が騙されているのだ。

どこをどう騙されているのか。本稿では、以下の問題について論じたいと思う。

\府債務は実態よりも過大に発表されている。

▲妊侫譴了に緊縮財政(投資関連支出の削減)を絶対にすべきでないのに、小泉内閣は五年も緊縮財政を継続してきた。そのため税収が激減し、財政再建どころか政府債務がかえって膨らんだ。その失政のツケを国民に払わせるための方策が大増税である。

こうした失政を支持する識者(学者や通称エコノミスト)が多くいて、彼らの間違った思考が世間に蔓延している。加えてマスメディア(新聞やテレビ)が政府の宣伝機関と化して公正な情報を国民に伝えていない。

サラリーマン大増税の嘘を暴く
財務省が喧伝する「財政危機」宣伝に騙されるな
経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号
JUGEMテーマ:経済全般



財政は「純債務」でみるもの

財政は「純債務」でみるもの

私は2001年と02年に衆参両院予算公聴会にあわせて三度招かれた。そこで述べたのは、「財政が健全であるかどうかは純債務で見るべきであり、その場合、目本にはまだまだ財政支出余力が十分ある。つまり財政危機ではない。それゆえ積極財政政策をとるべきであり、そうしないと財政赤字は縮小しない」ということだ。

ここで重要なのは「粗債務」「純債務」という考え方である。政府債務を把握する指標には、「粗債務」(資金の借り入れ・保証などの債務)と「純債務」(粗債務から政府が保有する金融資産を控除したネットの債務)の二つがあり、一国の債務をもっとも正確に表すのは純債務であるというのが国際的に共通の理解である。

それは当然で、いくら借金があってもそれに見合う資産があれば問題はない。実際、アメリカもこの純債務という指標で日本の財政状況を見ている。ところが、日本の政府は粗債務だけでもって、財政危機を煽ってきたのである。ここが第一の欺瞞である。

のちにくわしく述べるが、日本の財務省も、本音では国家の財政状況は純債務で見るべきだと考えている。にもかかわらず、国民には粗債務で危機感を煽っている。

政府の発表によれば、日本国には2005年6月末で795兆円の債務があり、粗債務を名目GDP(一国の経済規模を表す数字で、国民の額面給与と企業の収益の総合計と考えるとわかりやすい)で割った数字(「粗憤務の国民負担率」)は150%をこえている。このことをもって、政府は、わが国は深刻な財政危機であると主張し、マスコミもそう喧伝している。

確かにわが国の「粗債務の国民負担率」は主要国のなかでも突出して高い。しかし一方で、日本政府はほぼGDPに匹敵する巨大な金融資産も保有している(欧米諸国が保有する金融資産はGDPの15〜20%に過ぎない)2005年6月末で、わが国が保有する金融資産は推計480兆円。したがって純債務は315兆円に過ぎず、GDPの60%程度である。

また、これものちにくわしく述べるが、財務省は財政危機を煽るために、2001年から「債務のかさ上げ」も行ってきた。いわば、債務の見せ掛けを大きくするための帳簿上の操作である。この、債務のかさ上げがなけれぱ、日本の純債務はドイツやユーロ地域並みであり、まったく日本の財政は危機的ではない(図表◆法

2005年10月、アメリカ・ニューョークにあるコロンビア大学経済学部で教鞭をとる著名な経済学者、デビット・ワインシュタイン教授と日本の財政問題を話し合ったとき、教授もまた、「日本政府が財政危機を煽るのは、増税のための策略だ。日本の税率は年金保険料や社会福祉関連支出をいれると、すでにアメリカよりも高く、増税する必要はない」と、私と同じ見解を述べた。

ここで日本の粗債務と純債務の内訳を見てみよう。2005年6月末の政府の粗債務は795兆円。その中身は「国債(510兆円)。財投債(124兆円)として634兆円」「政府短期証券として97兆円」「政府保証債務として64兆円」である。

次に政府の金融資産480兆円の内訳を見ると、我々国民が年金・健康保険として積み立てた「社会保障基金」が254兆円、政府が実施している「内外投融資」が136兆円、不時のときに備えて保有している「外貨準備金」が90兆円(ほとんどアメリカ国債で運用)である。

国民一人当たりで見ると、380万円の金融資産を保有しており、そのうち「年金と健康保険として積み立ててきたものが200万円」、「残りの180万円は政府に預けて運用してもらっている」ということになる。こうした金融資産を国民のために使用すれば、増税や緊縮財政など全く必要ないのである。

財務省はホームページで財政を家計にたとえた「国の家計簿」を公開している。

それを見ると、月給40万円の個人がローンの支払いや家計簿、田舎への仕送りなどで毎月68万円使い、28万円ずつ赤字を出していて、さらにローンの残高が5300万円もあることになっている。これだけ見ると絶望的な状況だ。

しかし、一方では.3700万円の金融資産を持っているのだ。借金だけ強調し、貯蓄に触れないのはあまりに意図的である。

サラリーマン大増税の嘘を暴く
財務省が喧伝する「財政危機」宣伝に騙されるな
経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号
JUGEMテーマ:経済全般



財務省の使う「二枚舌」

財務省の使う「二枚舌」

1996年6月25日、橋本内閣は財政再建のための大増税計画を発表した。

社会保険料の増加、消費税の3%から5%への引き上げ、所得税増税をあわせて6兆円の国民負担増である。

この大増税の根拠は、「政府債務のGDP比率87%が欧米諸国より高くなったからとのことであった。もちろんこのとき政府は債務状況を粗債務だけで判断していた。

しかし、同じ時点での純債務のGDP比率を見ればわずか22%。先進国のなかでも最低であり、まったくの健全財政である。財政改革など必要なかった。このとき政府関係者のなかに、「政府債務は純債務で見るべきである」という見方があれば、増税がひきがねとなった97年の株式の大暴落、それに伴う金融恐慌は存在しなかっただろう。

1997年3月、当時のゴア米副大統領が来日し、「日本はなぜ内需抑制策をとるのか。内需を拡大して経済を活性化すべきではないか」と橋本首相に進言した。

しかし、橋本首相はこれを拒否した。ゴア副大統領は日本の債務を 「純債務」でみていたから、こうした発言になったのである。

橋本元首相は。2001年4月に、「私の財政改革は間違っていた、国民にお詫びびする」と責任を明らかにした。橋本首相の後を受けた小渕首相は財政再建策を凍結し、金融安定化政策を確立して公共投資の増額で景気を立て直した。その結果、2000年度には名目GDP成長率が二年ぶりにプラスに転じ、税収も3年ぶりに50兆円台に達した。

あのまま推移していれば、現在、名目GDPは600兆円、税収も60兆円(2005年度予算は44兆円)になっていたであろう。増税はまったく必要なく、経済規模が拡大する中での財政構造の改革ができたはずだ。

こうした良好な流れを一挙に潰したのが2001年4月にスタートした小泉内閣の「虚妄の構造改革」である。2002年度に小泉内閣は、前年に続いて一股会計の支出を前年比で削減する緊縮予算を組んだ。実に47年振りの2年連続の緊縮予算であり、典型的なデフレ予算であった。

予算が発動した2002年4月から5月にかけて、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズといった大手格付け会社が相次いで日本国債を格下げした。小泉デフレスパイラル予算が格下げの原因である。財務省はすかさず格付け会社に反論を送りつけた。ところが、面白いことにその反論の中身が純債務論に立脚していたのである。

「日本は世界最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんど国内で、極めて低い金利で安定的に消化されている。また、世界最大の経常収支黒字国であり、外貨準備も世界最高である。つまり、外貨準備など債務に見合いの金融資産があって(純債務で見たら)日本の財政は健全であるのに、国債の格付けを下げるのはおかしいということである。これに対して格付け会社は、

「(現状はそうであっても)このまま緊縮財政を継続してゆくと、名目GDP成長率が低迷し、国民の政府債務負担度合い(政府債務を名目GDPで割った数字)が上昇してゆくのが問題だ。と回答した。つまり、両社ともに、小泉緊縮路線では名目GDPが伸びないのが問題だ、もし増税するなら再度の格下げもある(ムーディーズ)と指摘したのだ。

財務省と両格付け会社の論争の是非は置いて、私が強調したいのは、財務省は国内においては粗債務で財政危機を煽る一方、海外では純債務で財政の健全性を主張するという二枚舌を使ってきたことである。

サラリーマン大増税の嘘を暴く
財務省が喧伝する「財政危機」宣伝に騙されるな
経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号
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財政危機は政府の「演出」

財政危機は政府の「演出」

これまで喧伝されてきた財政危機とは、増税を実現するための関係者の「演出」に過ぎない。そのもうひとつの証拠が、2001年から行なわれてきた「政府による債務のかさ上げ」である。

たとえば、内閣府は2001年度から地方自治体の下水道債務(67兆円)を国家債務に算入した。下水道業務にも当然、債務と見合いの固定資産がある。しかし、政府は意図的に借金だけを債務項目に組み入れて、債務のかさ上げを図ったのである。

内閣府の国民経済計算によれば、2003年度の日本の資産は900兆円。これに対して負債は820兆円で、差し引き80兆円の正味資産がある。ここに下水道の固定資産を計上すれば、その分だけ債務が相殺され、正味資産は軽く100兆円をこえていた計算になる(実際、2000年度末の正味資産は191兆円で、つじつまがあう)

債務のかさ上げ工作はさらに続く。2001年末に財務省ば将来の年金債務、公務員の給与・退職金、郵便貯金、簡易保険の保険準備金などもすべて政府債務と見なすことにして、「国は債務超過だ」と発表した。

この発表によれば正味資産はすべて吹っ飛び、最大776兆円の債務超過になる。

しかし、下水道債務と同じように、これらの債務にはすべて見合いの資産がある。郵貯・簡保だけでなく、将来の年金債務でさえ「保険料の徴収権」という無形資産がある。こうした資産を無視して債務だけを拡大して強調したのである。

これらの工作が国民を欺くためのものであった証拠に、2004年9月の発表になると、将来の国民年金債務、公務員給与、退職金などは債務項目から除かれてしまって、国の債務超過額は252兆円に激減しているのだ。財務省の恣意によって一国の債務が増えもすれば、減りもする。

しかも500兆円といった巨額の教字が変動するのだ。これでは国民は何を信じてよいのかわからない。内閣府の国民経済計算によれば、政府は債務超過ではない。

しかし、政府は今後の操作によって国民経済計算の数字も債務鰯過にしてしまうのではないか。

純債務論は国会でもたびたび出ており、日本財政の特徴を無視した緊縮一点張りの財政方針に異論が出ている。2001年1月23日、麻生太郎経済財政担当相〈当時〉は、日本は世界最大の債権国だし、国・地方の長期債務から国有財産などを差しし引いた純債務のGDP比率は欧州諸国の平均程度だ。国が明日から破産するような状況にはない。(日本経済新聞、2001年1月24日付け)と述べている。

また、国会審議のなかでも、木村仁、日出英輔、秋元司の各参議院議員(自民党)は、日本の財政は純債務で見るべきではないかと指摘しており、このなかで秋元議員は「政府は債務を公表するときには、金融資産も公表してほしい(2005年3月14日)と財務省に要請している。財務省はこうした国民の代表の要請に誠意をもって答え、純債務ベースで日本の債務を適正に国民に伝えるべきである。

また前政府税制調査会長・加藤寛氏(千葉商科大学学長)も、「(日本の)純債務は250兆円程度。…財政当局は、いたずらに危機を叫んではいけない。…財政危機を当然のこととすれば大増税必至となるが、この固定概念をまず捨てるべきだ」(産経新聞2005年12月14日付け)と述べている。

デフレのときに緊縮財政をやると、名目GDP成長率がマイナスになり増加するのは財政赤字と政府債務だけであるこれは1930年代に日米両国で発生した大恐慌の教訓である。とくに日本では浜口雄幸内閣が徹底した緊縮財政を行い、日本経済・社会構造を崩壊させた。

この教訓を無視して小泉内閣は緊縮予算を5年も継続してきた。結果は経験則どおり財政赤字がかえって拡大し、政府債務が増加した。そのため、今や純債務で見ても、日本の国民の債務負担率(純債務を名目GDPで割った数字、これが本来の財政規律である)は急上昇している。

だから政府は、大増税をして債務残高を削減しようとする。しかし、増税によって債務残高が少々減ったところで国民負担率の分母になる名目GDPが域ってしまえば、結果として国民一人当たりの負担は下がらない。名目GDPが緊縮財政のために極端に低迷している限り、いくら債務残高を減らしても国民の債務負担率が上昇する。

このような悪循環を打ち切るためには、緊縮財政をやめ、積極財政に転じるしかない。しかし、それをやれば、政府はこれまでの政策が誤りであったことを認めなくてはならない。

政策の誤りを認めた橋本元総理は総裁選で惨敗した。今、政府・与党関係者があらゆる世論操作をおこなって増税やむなしの空気を作ろうとしているのは、これまでの間違った政策の責任逃れをしたいからに相違ない。

そう考えないと、これだけの愚策が延々と続けられてきた理由がわからない。

サラリーマン大増税の嘘を暴く
財務省が喧伝する「財政危機」宣伝に騙されるな
経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号

JUGEMテーマ:政治

クリントンの成功に学べ

クリントンの成功に学べ

私の増税反対論にまだ納得できない方のために、クリントン政権の財政再建策をもう一度検討してみたい。2,927億ドルもの巨額の財政赤字をわずか5年で黒字に転じたクリンントンの施策には、小泉政権が見習うべき教訓があふれている。

アメリカの連邦議会が「財政収支均衡法」(グラム=ラドマン=ホリングス法)を成立させ、財政均衡へ向けた施策をスタートさせたのは85年12月、レーガン政権のことだった。この法案の主要項目は、

(1)毎年度の財政赤字の目標値を設定し、91年度に財政均衡にすること、(2)予算の赤字が目標値を上回った場合、大統領の一律削減命令によって、超過額の半分を国防費から、半分を非国防費から削減できること、の二つであった。

ところが、「財政赤字目標が達成されないときには、大統領が強制的に予算の削減を出来る」などの強制執行項目が議会の強い反発にあい、最高裁が違憲判決を下した。

その後、90年にこの法律は一部改正されて、数値目標ははずされて施行された。父ブッシュ政権である。

しかし、選挙中は、「増税はしない」(1988年)と公約していた父ブッシュ元大統領が結局は増税に踏み切るなど、実体経済の動きを考えない、数値目標だけの財政改革は失敗に終わったのである。

そして1993年、12年ぶりに民主党として政権の座についたクリソトン大統領も財政赤字削減を最優先とする政策をとった。就任早々のクリントン大統領は、93年2月17日に議会で演説し、財政政策の基本を次のように定めた。

(1)雇用増大のために官民ともに支出を消費から投資に向ける、

(2)家族と勤労を尊重する、

(3)保守的な見積もりによる予算の編成、

(4)政府支出の削減と公平税制の導入の四点である。

ここで注目されるのは、雇用増大のために官民ともに支出を消費から投資に向けるという基本方針である。これは、限られた政府予算から消費(人件費などの政府を稚持する経費)を削減して投資項目に重点支出する、そうすれば税収が増加するという意図のもと決められたものだ。この予算の特徴は、次のとおりである。

(1)予算は積極財政で、歳出総額は物価上昇を上回る伸び率とし、歳出全体で第一期(93年から96年)には年平均3.3%増、第二期(97年から2000年)に年平均3.0%増とした。

小泉予算のように予算全体の伸びをマイナスや横這いにするような緊縮財政ではなく、予算支出が景気にプラスの影響を及ぼすように配慮したのである。

(2)投資項目として重点的に増額したのは、道路輸送関係費(第一期は年平均6.3%増、第二期は同7.4%増)、地域開発(第一期は年平均15.7%増、第二期は同2.4%増)、教育訓練(第一期は同3.3%増、第二期は同6.8%増)である。

(3)その一方でムダを省き、消費項目を削減するために政府職員を3万人削減した。

その結果、第一期の4年間で物価が年平均2.2%上昇しているにもかかわらず、一般政府の歳出は年平均で1.5%増に過ぎず、第二期では物価が年平均1.7%上昇したのに予算では年平均わずか0.8%増に過ぎなかった。

つまり、投資が大幅に拡大される一方で、ムダな消費の削減がそれを上回る勢いで達成されたため、全体としての支出は予定よりも抑えられたわけである。これこそまさに、「ムダな消費を削減し、投資に振り向ける」方針を具体化したものである。

「小さい政府」とは、政府のムダな経費を抑えることであって、予算総支出や投資関連支出を削減することではなく、全体としてはむしろ支出を増やして景気を拡大して税収を上げることなのだ。

(4)このほか投資を促進するインセンティブ(奨励策)を多く盛り込んでおり、中小企業を対象とした投資減税、R&D(研究開発)税額控除の延長実施、勤労所得控除の拡充などが盛り込まれている。

また、所得税について、最高税率だけを31%から36%へ引き上げ、一定水準以上の高額所得者に10%の付加税も導入した(最高税率39.6%)

(5)義務的経費のなかでとくに公的医療保険などの社会福祉関連支出については、一定のルールを作って抑制し、第一期には年平均5.6%増だった義務的経費は、第二期には年平均4.6%増にとどまった。こうした努力が実り、98年度に財政は黒字になった。

アメリカの財政赤字が解消した要因として、2001年度の大統領の予算教書では、「第一期では赤字解消の約七割は景気回復によるものであり、税率の変更などの構造要因は約3割に過ぎない。ついで第二期は赤字減少の約七割は高額所得者への増税などの構造要因であった」と述べられている。

これらクリントン時代のアメリカの財政政策から得られるキーワードは、「積極極財政」「投資減税」「公共投資の増額」「政府経費支出の削減」「社会保障関係費の一定のルール化」である。

クリントンは全般的な増税によらずに、財政再建を実現した。経済をつねに拡大路線に導くことが苦境を打開する最短の道であることをクリントンの政策は示したのであり、同大統領の8年間、名目GDP成長率は年平均で5.7%(8年間で名目GDPは1.5倍)、実質GDP成長率は年平均2.8%となり、財政は5年目に黒字になり、政府債務も大幅に減少した。

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経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号

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サラリーマン大増税計画

現在のところ政府与党は、谷垣財務相、与謝野金融相が増税派で、竹中総務相、中川政調会長が歳出削減派と言われている。両者は表面的には論戦を繰り広げているようだが、実のところ、竹中氏とて、「歳出削減すれば消費税上げは10%程度ですむ」と言っているのだから、事実上の増税路線で一致していることは間違いない。増税への芝居なのだ。

また、政府税制調査会(石弘光会長)は、2005年6月、サラリーマン大増税計画を発表し、標準サラリーマン家庭(年収七百万円の会社員、妻は専業主婦、子供は高校生と小学生)の現在の納税額、39.7万円を90.3万円(2.3倍)にする大所得税増案を発表した。

とくにこの案では、「定率減税」「特定扶養控除」「配偶者控除」「住民税の生命保険料・損害保険料控除」を廃止し「扶養控除は税額控除化(所得税額から控除する方式)し」、「給与所得控除」は半分にし「住民税均等割り」は増税するという方針である。たしかにこれで税収が11.3兆円増える。

しかし扶養控除や配偶者控除をなくすことは、明治以来の日本の家庭を支えてきた専業主婦の内助の功を否定することであり、まさに増税が家庭を破壊する、恐るべき事態が招来されようとしている。

この大増税案の目標は、2011年度に「財政の基礎的収支〈プライマリーバランス)」を均衡させることにある。プライマリーバランスとは、「国債発行による収入を除いた歳入と、国債の元利払いを除いた歳出の差」を言う。

つまり、プライマリーバランスを黒字にするということは、ざっくり言えば「国債利払いを除いた支出を、税収の範囲内に抑える」ことだ。

しかし、クリントンのやり方と正反論の緊縮・増税路線で黒字化が可能だとはとても思えない。2000年には小渕内閣による積極財政と金融安定化政策の効果が出て税収が51兆円に達し、プライマリーバランスはマイナス11兆円まで縮小した。ところが小泉内閣がデフレのもとで緊縮財政を導入したために、回復軌道に乗りつつあった経済を一挙に墜落させ、税収は2003年度には42兆円まで落ち込み、プライマリーバランスの赤字は20兆円に拡大した。2005年度は景気が若干回復したと言っても税収は47兆円程度で、これは18年前の1987年の水準に過ぎず、プライマリーバランスも15兆円の赤字と予想されている。

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経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号

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日本は世界の笑いものに

昨年12月に発表された2006年度予算、財務省原案の特徴をあげると以下のようになる。

一般会計歳出予算総額を79.7兆円(8年ぶりの80兆円割れ)。

国債新規発行額を29.9兆円(30兆円割れ)

個人所得税の増税――定率減税の廃止。

IT(情報技術)投資促進税制の廃止、産業競争力のめの情報基盤強化税制新設。

公共投資の削減、前年比4.4%カット。

財政投融資、前年比12%減で15.5兆円(1978年以来、28年ぶりの低水準)。

税収は45.9兆円、(1986年、20年前の税収)。

名目GDP成長率2%、GDPデフレーターはゼロ。

国民の負担は、定率減税廃止の2006年度分(1.6兆円)、公的年金等控除の上乗せ部分廃止(2千億円)、年金・雇用保険の引き上げ(4千億円)の合計で2005年度よりも2.2兆円の負担増になる。

一口で言って、「緊縮、増税、帳尻合わせの無策予算」というべきであろう。

(1) 予算総額がマイナス、

(2) 従来から極めて不十分な投資促進税制さえ縮小、

(3) 投資不足とデフレの国で公共投資をさらに削減、

(4) 定率減税の廃止で所得税増税

などといった点で、財政赤字削減に成功したクリントン財政とは、全く逆な政策を取っており、これでは実体経済が一段と冷え込み20年前の税収すらあがらないであろう。

とくにい療蟷餮裟任蓮■横娃娃廓度予算で経済産業省の強い要請で「2兆円の投資減税枠」が設置されたもので、これがIT関連の投資を促進し2004、2005年の法人税の増額に寄与したのである。こうした実績までも認めない予算案では税収が増えるはずがない。これではアメリカだけでなく世界の笑いものだ。

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経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号
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増税理論の間違い

増税理論の間違い

にもかかわらず、政府与党や政府よりの学者、エコノミストたちの間からは緊縮財政・増税しかプランが出てこない。彼らは大きな誤りを犯している。それを整理してみよう。

(1)財政均衡主義者の基本的考え方は「経済学がなんと言おうと財政は均衡すべきもの」で、「財政は法律として運用されるべきもので、赤字で困ったら法的措置として税率を変更し、増税で税収を増やせばよい」というものだ。昭和恐慌も橋本財政改革も、そして小泉緊縮政策も同じである。アメリカで父ブッシュ政権が失敗した数値目標を入れて予算を縛ろうとする考えだ。

日本の政府と与党、政府案を支持する識者から緊縮財政と増税しか案が出てこないのは、「どの国でも、経済規模(名目GDP)を拡大する政策を取らないと財政赤字は縮小しない、つねに拡大路線が状況を打開する」という経済の経験則を忘れてしまっているからだ。デフレ政策を長年継続して財政赤字削減に成功した例は歴史上どこにもない。

日本は対外債権を2百兆円も持つ世界一の金持ち国家であり、自分のカネを自分で使うようにし、積極財政で国債を増発し需要を喚起すれば、名目GDPを年率5%ぐらい成長させることはすぐに可能である。

そうすれば、社会福祉関連予算の需要(平均して毎年3%増)もすべてカバーできる。経済規模を拡大する政策を取らないで、緊縮財政と増税では一国の経済と社会生活が破壊されてしまう。

(2)「財政政策によって税収をいかにして増やすか」についての政策オプション(選択肢)について考えようとしない。

(3)粗債務だけで財政を把握し大失敗したことへの反省がない。橋本財政改革は粗債務だけで日本の財政を危機と判断して金融恐慌を引き起こしてしまった。小泉構造改革も同じ間違いの上に立って実行されており、その失政のツケが数値目標による緊縮強化の予算と大増税だ。

(4)「日本は小さい政府にすべきで、だから予算規模も縮小する」というのは大きな誤りである。現実には日本の予算規模(政府の大きさ)は経済規模に比べて小さすぎる。日本は大きい政府ではなく、「小さすぎる」政府なのだ。経済規模(名目GDP)に対する予算規模(歳出)を見ると、デフレが始まる前の1997年度では、日本とアメリカはともに主要国の中でこの比率が最低であり、この比率は2003年度でも変わらない。

すでにこのとき日本は十分に小さな政府であったのだ。しかも、その後の予算規模を見ると、1997年度を100とすると、アメリカは132、日本は105。アメリカは経済の伸びに応じた妥当な政府、日本はますます小さな政府になっていることがわかる。

日本が緊縮財政をとらずに歳出をアメリカ並みに伸ばしておれば、日本の予算規模は100兆円(現実は80兆円)に達していたであろう。こうすれば名目GDPもアメリカ並みに伸びていたわけで、税収は65兆円ぐらいになっていたはずである。

名目GDPの低迷とともに、税収が増えない理由がここにある。だから日本では、「政府の維持コストは削減」しても、予算規模は投資項目を中心として、毎年3〜4%増加させるのがよかろう。

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経済学者 菊池英博教授
文藝春秋2006年3月号

JUGEMテーマ:政治



識者たちの「ウソ」 吉川洋氏、本間正明氏、ニュースキャスター

識者たちの「ウソ」

小泉デフレ政策を支持し、国民を大増税に追い込んでゆく識者の見解にも、事実に反すること (ウソ)が多く見られる。代表的なものを見てみよう。

(1)「現在の日本はいざなぎ景気を超える景気拡大」 (吉川洋東大教授、経済財政諮問会議議員、ほか一部の新聞)

平均給与が7年間連続してダウンしている国民にとっては、狐につままれたような言葉であろう。「いざなぎ景気」とは、高度成長時代の1965年11月から1970年7月までの57カ月間、景気が拡大し、名目GDPが年平均17.3%増加、実質成長率が11.6%(GDPデフレーター=総合物価上昇率は年平均5.7%)であり、この間、名目GDPは2.2倍、税収は2.2倍に伸びた名実ともに高度成長である。この時期と現在とを同様に見る根拠のキーワードは「GDPの実質成長率」である。実質成長率が伸びていれば景気は拡大しているという論理だ。

ところが、ここには数字の詐術がある。いざなぎ景気時代はゆるやかなインフレである。それに対して現在の日本はデフレ。「GDPの実質成長率」は「名目成長率マイナス物価上昇率」で表される。デフレ時代は「物価上昇率」がマイナスなので、デフレが深刻であればそれだけ見せかけの実質成長率はプラスになる。まさに「数字のマジック」である。

実質という言葉に惑わされてはいけない。デフレのもとでは「実質成長」は一種の幻想に過ぎない。吉川教授や一部の新聞は、現在の「景気拡大はいざなぎ景気越え」などというが、それならなぜ国民の債務負担が増加し、政府が増税するのか。

(2)「ケインズ経済学は幻想にすぎない」(本間正明大阪大学教授、経済財政諮問会議議員)

同氏は「ケインズ幻想はいまや日本だけ、世界の経済理論は転換している」(「週刊ダイヤモンド」2003年8月30日号)と述べ、緊縮財政を支持する見解を述べている。国民にとってはケインズだろうと、マルクスだろうと、市場原理だろうと関係なく、緊縮財政で長期停滞に悩む経済をどのようにして活性化するかが問題なのだが、ケインズの考え方が今でも世界で支持されていることは明らかにしておく必要があろう。

2001年にデフレ懸念が出たアメリカでは、大幅な減税を実行し、いち早くゼロ金利政策を採用して、需要喚起政策を取った。これは、「需要不足のときには、政府が思い切った需要喚起政策を取るべきだ」というケインズの考えそのものであり、アメリカこそ今でもケインズ経済学を最大限活用して、景気回復策を進めている国である。

(3)「政府の債務は全額返済すべきである」

最近、テレビや新聞に出てくる識者やキャスターのなかに、「政府の債務はもはや一千兆円に達し、全額返済するにはxx年もかかる。支出を抑えて、全額返済すべきだ」とコメントして、驚いてみせる人がいる。これはむしろ滑稽な間違いである。

名目GDP成長率が純債務の増加率よりも大きい限りにおいては、政府純債務の国民負担率は減少してゆくので、政府の債務はいくらであっても問題はない。政府債務の総額を引き下げるというのは倫理的目標(借りたカネは返そうといったレベルの)であって政策的目標ではない。個人とちがって政府は借金をゼロにする必要はなく、「政府純債務の国民負担率」を長期的に引き下げていくことができれば、それでよいのである。

(4)「国の財政赤字は家計の赤字と同じで、収入を上回る支出は削減すべきだ。国債残高を子供に引き継がせてはならない」

予算案が決定されるたびに、新聞やテレビに登場する意見である。しかし、(3)でも述べたように政府の赤字と家計の赤字は本質的に異なるのだ。

あえて家計にたとえるならば、日本の国債は親が子どもからおカネを借りるようなものである。というのも、日本の国債ほその95%が国内で消化されているからだ。日本国民から借りたおカネが日本国民のために投資され、いずれ償還されておカネは国民の懐に戻る。もちろん、利息も日本国民に支払われる。これが大部分を外国人に持たれているとしたら、親がした借金を子どもが払わせられるという構図が成り立つが、いまのところその心配はない。このように内国債で資金が調達された場合、それが有効な投資先に投資されているかどうかが問題であって、残高だけを論じるのは、本末転倒である。

(5)「これからは高齢化社会になる。だから国債の発行は抑えるべきだ」

最近出てきた危険な間違いである。高齢化社会と少子化に向かう今こそ、社会資本の充実と生産性向上のための投資を前倒しして、実行すべきである。人口が減ってゆくとしても、労働者一人当たりの資本投入率が高くなれば、生産性は向上し、名目GDPの成長率を維持することはできる。だから、将来の生産性向上のもとになる効率的な公共投資は、本格的な高齢化社会がくる前に前倒しで実行したほうがよいのである。

(6)「新規国債の発行額を金額でXX兆円までとすべきだ」

財政規律の指標は、「純債務を名目GDPで割った数字」とすべきであることは、すでに述べたとおりである。経済活動は日々動いているので、債務の限度を金額で決めても、達成できるわけがない。アメリカでも金額で財政目標を設定しようとして、失敗に終わっている。そのほか、「粗債務」だけの残高を見て、「日本の財政は破綻状態だ」と判断したり、「日本はアルゼンチンのようになる」といった見当違いの考え(大ウソ)もある。これらはあげていくとキリがないので、興味がある向きは拙著「増税が日本を破壊する」(ダイヤモンド社)を参照されたい。

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