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改造すべき「構造」とは何か(6)

『エコノミストは信用できるか』東谷 暁 著 2003年11月発行 より


異端説を採用しても「高コスト」ではない (P.129)

この「高コスト」論争は、政治的には「高コスト」派が勝利した。というのは、97年5月に「経済構造の変革と創造のための行動計画」が閣議決定されてしまったからである。
この中には「高コスト構造の是正」が重要項目として提示されていた。橋本政権は大胆にも「異端説」を採用したわけだ。

しかし、この奇妙な「高コスト」論に対する批判は、この閣議決定以後も続いた。たとえば山家悠紀夫氏(第一勧業総合研究所専務理事・当時)は、「高コスト」論と「産業空洞化」論を激しく批判している。(「偽りの危機 本物の危機」97年10月)

興味深いのは、山家氏が吉冨氏のような「通説」ではなく、リチャード・クー氏や香西氏のように「異端説」を採りながら、「高コスト」説は間違っていると結論づけたことだ。

山家氏は、為替レートは「経済収支の動き、とりわけモノの動きを反映して決まる」という。円高・円安は経常収支、つまり貿易の黒字・赤字によって決まる、というのだから、クー氏や香西氏と同様である。しかし、そこから導く結論はまったく異なる。

「『高コスト危機説』が『内外価格差』論議と同じ論拠にたっているということは、『内外価格差』論議と同様に間違っている」というのである。

そもそも内外価格差とは何か。
貿易財で決まる為替レートにより非貿易財を計れば他の国より高く見える。日本は海外に輸出する貿易財産業は生産性を高めたが、国内だけで消費する非貿易財産業はそれほど生産性を高めてこなかったからだ。

しかし、日本の非貿易財が日本の貿易財に比べ、生産性が低いからといって、日本経済が「高コスト」だということにはならない。

なぜなら、貿易財を製造する際には輸送や通信などの国内の非貿易財(およびサービス)が使われている。円高を招く日本の貿易財の強さは、こうした高いはずの非貿易財の諸コストを織り込んだ上での結果だからである。

「正しい論理はこうである。日本の貿易財産業は生産性が高い。その高い生産性を反映して為替が円高になる。‥‥仮に何らかの努力により、非貿易財産業の生産性が上昇し、その価格が下がったらどうなるか。貿易財産業のコストは下がるから貿易財価格の引き下げが可能となる。‥‥これは日本の貿易収支なり経常収支なりの黒字を増加させることになって新たな円高が進む要因となる。‥‥『高コスト危機説』は、‥‥論理上も破綻している」


日本は「高価格国」なのだろうか (P.131)
(要旨)
もともと、リチャード・クー氏の「悪い円高」論も、香西氏、中谷氏の「内外価格差」論および「高コスト」論も、日米構造協議によって日本の「構造」が批判されて以後に隆盛を見た議論だった。そして同じく「通説」を無視するか、批判的な立場をあえて採用することで、もっともらしい議論を展開した。

ここには90年代のバブル崩壊以後における日本経済の衰退を、アメリカ側の政治的な意図に沿う形で説明する、倒錯した姿勢が見られる。バブル崩壊によって生じた日本経済の後退を、それ以前からの「構造」のせいにする奇妙な議論だったのである。

しかし、日本経済は「構造」がおかしいから「高コスト」であるという曖昧模糊とした主張は、最近のデフレ論においても跳梁跋扈することになった。日銀などが主唱した、いわゆる「良いデフレ」論である。技術革新が進むことによってハイテク製品が安くなる。また、安い輸入製品が入ってくることで、日本の内外価格差が解消するきっかけとなり、高コスト経済が是正される。これは「良いこと」ではないか、というわけだ。

中谷氏の「内外価格差の克服」も同じ議論である。野口悠紀雄氏(東京大学名誉教授)も「良いデフレ」論を唱えている。(週刊ダイヤモンド、2001年10月20日号)

しかし、パソコンなどのハイテク製品の急速な低価格化はアジアでも中国でもほぼ同じ速度で起こっているため、「内外価格差」の解消には関係ない。
またアジア、中国の安い製品が輸入され、日本国内の同製品の価格を下落させたところで、物価全体に与える影響は必ずしも大きくなく、また同じ効果はアメリカやヨーロッパの国々にも及ぶのだから、日本だけがこの効果を利用して「以上な高価格」から「標準的な物価体系」の国に転換できるわけがない。

日本=内外価格差が大きい国、日本経済=高コスト問題を抱えた経済、したがって日本は構造改革によって、これらの問題を解消すべきだという思い込みは、90年代を通じて日本経済論を混乱させ、名のあるエコノミストたちの議論に忍び込み、いまも経済論議を混乱させている。


JUGEMテーマ:政治



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