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日本はオーバーバンキング(銀行過剰)ではない

『増税が日本を破壊する〜本当は「財政危機ではない」これだけの理由〜』
菊池英博 著 2005年12月1日発行 より


日本はショートバンキング(P.133)
(要旨)
日本とアメリカは銀行にある預金総額がほぼ同じであるのに、銀行の数は日本はアメリカの「5分の1」である。経済規模(名目GDP)で比較しても、実質的にアメリカの半分である。ドイツ、イギリスと比べても日本の銀行数は少ない。

日本の大手行は6〜7行あってよい。3行への集約は、日本が国際取引を拡大する上で大きなマイナスであり、国内では寡占化と金融の硬直化を助長する。
この面からみても、UFJ銀行を存続させるべきであった。


国内で進む金融の寡占化と硬直化(P.135)
(要旨)
国内銀行に占める三大メガバンクの市場占拠率は異常に高く、取引条件や銀行サービス面で市場を支配できる状況にある。

アメリカ、ドイツ、イギリス、カナダであれば、東京三菱とUFJの合併は認可されなかった。各国にはそれぞれ、金融秩序維持と競争促進のための相応のルールがある。日本には競争制限的ルールが何もない。

大手の国際銀行がわずか3行では、日本の金融機関の国際競争力が弱体化する。銀行を利用する企業側からみても、リスク分散や多角的な事業展開をする上で日本には大手銀行が6〜7行あるべきである。

金融システムの安定性からみても、三大メガバンクの1行で大口不良債権が発生したとき、それを救済する銀行が2行しかない。
ましてや、2行で問題が起きたときには金融不安が拡大するであろう。


銀行の寡占化と硬直化にどう対処すべきか(主要国のルール)(P.136)
(要旨)
主要国には、金融秩序の維持と競争促進のために、相応のルールと秩序が存在する。

アメリカ
「州際業務・支店設置効率化法案」(リーグル・ニール法)1994年に成立
州を超えた銀行業務の展開が可能になった。
1銀行グループの預金受入額は「全米の付保預金の10%を限度とする(10%ルール)」法律
州際周辺の地域では「当該地域の預金総額の20%程度までとする(20%ルール)」法律や慣習

ドイツ
海外で業務展開する三大銀行の国内シェアは資産総額で9%に過ぎない。
国内には代償合わせて3500行の銀行があり、寡占化を防いでいる。(日本は全国で約1600行)

イギリス
大手銀行4行が海外各地で国際業務を分担
国内では1銀行の中小企業に対する貸し出しシェアが国内の中小企業向け貸出総額の25%を超えたときに、政府の指導で中小企業向け貸し出しの新銀行を参入させた例がある

カナダ
1998年に6大銀行が2行ずつ合併して4行になる合併案があった。
しかし金融当局は
「4大銀行に集約されると、4行中の1行の資産シェアが30%を超え、寡占となること」
「4行中の1行で大口の不良債権が発生した場合、吸収できる銀行が少なくなること」
を理由として、この合併を否認した。寡占化を防止した優れた見識である。

こうした金融秩序と金融システム安定化の理念は、日本の金融庁や公正取引委員会にはまったくみられない。

東京三菱銀行とUFJ銀行の合併は、主要国ではどの国でも認められないであろうし、3行が合併した「みずほ銀行」も否認されるか、条件をつけられたであろう。
ドイツでは国内資産の分割(国内取引だけを行う銀行への分割)を要求されるのではなかろうか。日本でも、金融業務の寡占化と特定地域での過度の集中に対して、競争促進的ルールづくりが必要である。


オーバーバンキング論は誤り(P.137)

「ペイオフは国際公約だ、金融システムを健全化させる」「日本はオーバーバンキングである」などと称して、マスコミを煽ってきた識者がみられる。こうした識者の見解は、ことの片面だけをみて極論しているケースが多く、日本にとっては有害である。

ペイオフ制度が完全実施されるときに、新聞では「預金者が自己責任で預金先を選ぶことになった」「証券投資を含めて預金者の選択肢が広まった」などといった記事ばかりで、銀行の貸し出し機能が弱くなっている点(大きなマイナス面)を指摘した記事はほとんど見当たらなかった。

「日本はオーバーバンキング」と言う識者のなかに、「個人の金融資産が銀行に集中しすぎている」という意見がある。しかし、これまた実情を反映しない見解で、間接金融が中心である日本では、元本保証のある銀行預金に金融資産が集中するのは当たり前のことである。

しかも、政府のデフレ政策で証券市場が低迷しているときに、「ペイオフ完全実施によって、預金を証券市場に放出させるべきだ」(経済同友会)という意見は、「デフレのときに国民にバクチを打て」と強要するようなもので、極めて不適切な見解である。

また「日本はオーバーバンキングで、オーバーキャパシティ(過剰な貸し出し能力の存在)である」として、「銀行合併の効果は少ない、合併よりも解散・破産・廃業したほうがよい」という見解がある(川本裕子著『日本を変える』中央公論新社、2004年)。

しかし、これこそ実体経済と金融の実情を理解していない見解である。日本の銀行は、数の上で、オーバーバンキングどころか、ショートバンキングであることは、すでに説明したとおりだ。現在、日本の銀行に資金が余っているのは、需要がないからである。

とくに二度にわたる財政再建策の失敗で、実体経済はデフレで新規の資金需要が出てこない。資金需要がないから、預金が余っている。だから、貸し出し競争が激しくなり、貸出金利が下がっている。しかも、銀行の数が多いからといって、合併・解散・廃業させたら、その預金が別の銀行に移るだけで、全体としての資金余剰は変わらないし、銀行不足が進んで、一段と金融システムが弱体化し、金融サービスが低下することになる。

こうした意見が出るのは、需要不足経済であるのに、供給過剰だと誤診して、日本の経済力を弱体化させている「虚妄の構造改革」(第2章参照)と同じ発想である。

また、「(銀行の)頭数が減るだけでなく、キャパシティが減らない限りオーバーバンキングは解消しない。究極的には預金が減らないと解消しない」(池尾和人氏『週刊東洋経済』2004年7月31日号)という見解もある。

こうした見解は「直接金融(証券市場を利用した金融で、企業は証券会社を通して社債や株式を発行し、投資家は証券会社を通して株式や社債を売買する金融方法)はよい金融手法で、日本は、早く預金を減らして証券市場へカネを流せ、それが金融のあり方としてよい方法だ」という主張である。しかし、これも「アメリカで多く使われている金融の方式をまねるべきだ」という意見で、日本の現状にまったく当てはまらない。

日本でも景気がよくなり、証券市場が活性化すれば、個人投資家の資金が預金から証券市場に流れるであろう。しかし、あのバブルのときでさえ、あれだけ株式市場へカネが流れたのに、銀行預金は減るどころか大幅に増えており、それで取引が拡大し、銀行の収益も増えていた。

つまり、日本国民の特徴として、間接金融(企業や個人は銀行に預金し、銀行が資金を必要な部門に貸し出す取引慣行)は一挙に減るものではない。日本はアメリカとは歴史が違うし、取引慣行も違う。

池尾氏のような意見は、日本の取引慣行と歴史を無視して、アメリカの手法を取り入れようとするもので、日本の識者に多くみられる意見である。同氏はペイオフ制度導入を強引に主張した学者でもある。日本でペイオフ制度を実施した結果、金融機能が大幅に弱まったことに対して、どのようにして責任を取るのか。

以上の説明で、金融改革がかえって金融システムを不安定にさせ、銀行の利用者、借入人にとって、銀行が利用しにくくなっている現状をご理解いただけたであろう。

金融改革が実体経済を弱体化させ、肝心の金融システムそのものが、経済発展にとってマイナスになっている。これでは経済が活性化しないし、経済発展が期待できない。税収が増えない経済になっている。こうした状況をどのように改善するかが問題である(第5章参照)。

JUGEMテーマ:政治



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