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改造すべき「構造」とは何か(2)

『エコノミストは信用できるか』東谷 暁 著 2003年11月発行 より


アメリカが日本に改革を要求した「構造」(P.114)

このとき、協議が進むにつれて膨大にあったアメリカ側の問題点の指摘は、次第に6つの要求に絞られ、アメリカの「目的」がますます明瞭になっていった。

第一が、日本はもっと公共投資をすべきだということ。下水道や道路、公園などの整備のために、3〜5年で公共投資をGNP比で10%まで引き上げるべきだ。

第二が、土地の高価格が消費抑制を導き、外国企業の参入障壁になっているので、供給促進のための土地税制を改革し、容積率などの規制緩和を実行すべきだという要求。

第三が、複雑な流通制度を改め、外国企業が参入しやすいようにすべきだということ。とくに大規模小売店法を緩和して、数年後には廃止すべきだと主張。

第四が、排他的な取引慣行を解消するため、独禁法を強化すべきという要求。たとえば「談合」の規制などを強化すべきだという。

第五が、金融や企業にみられる「系列」に対して、何らかの対策を採るべきだという要求。系列は参入障壁となり、また株式の相互持ち合いが自由な商取引を妨げているという。

第六が、内外価格差が大きく、円高差益が十分に還元されていないのは問題だと指摘。内外格差を解消すべきだと主張。

さらに、協議の進展にともなって、アメリカ側は公共投資の増額、独禁法の改正、大店法の廃止に絞り込んでいった。つまり、日本はアメリカのモノの購入を進んで受け入れろということにほかならなかった。

この協議のなかで、86年に日本が発表していた『前川リポート』が内需拡大を主張していたことをアメリカ側は繰り返し衝いてきた。内需を拡大し、海外からの参入を容易にする方針は、すでに日本側でも提示していたではないかというわけである。

当時、日本の経済進出によって職を失ったと信じるアメリカの労働者や、ゲッパート下院議員のようなジャパン・バッシングを票獲得の手段としていた政治家たちは、日本の貿易黒字をアンフェアな方法によって得た利益だと批判していた。

しかし、まともな経済的知識をもっていれば、日米貿易不均衡の最大の原因は、アメリカ国民の消費が伸び続け、その一方で日本国民の貯蓄率が高止まりしているためだと認識せざるをえなかっただろう。

事実、連邦準備制度理事会のポール・ボルカー議長は、84年7月、アメリカ議会において「直接的・間接的に、われわれの財政赤字は外国からの資本流入によって賄われている」と発言。87年2月には、アメリカ上下両院合同委員会で率直に「要するにアメリカは、個人も政府もモノをつくる以上にカネを使って、能力以上の生活をしている」とすら証言していたのである。

前出・日本経済新聞の89年8月22日社説も「日米間の貿易の不均衡は、基本的には双方の「マクロ経済政策、環境のスレ違いにある」と、ごく普通の経済的認識に立って論じていた。問題は、政治的にどこまで摺り合わせができるかということにつきた。


日経の「屈服」とクー氏の「隆盛」(P.116)

ところが、90年からの株式市場のバブル破裂、91年から始まった土地価格の急落は、日本経済の繁栄だけでなく、こうした冷静な認識すらも崩壊させてしまった。

かつてアメリカを「戒め」た日本経済新聞は、それまでの日本経済・礼賛路線から急激に路線を転換、90年6月30日の社説は「日本的商慣行から不透明さをなくせ」となり、同年9月9日には「構造協議の厳しさを忘れていないか」と題する社説を掲載して、今度は日本の読者たちを「戒め」始める。

時期を同じくして、当時慶應義塾大学助教授だった竹中平蔵氏は、91年6月刊の『日米摩擦の経済学』(日本経済新聞社)などで、アメリカに文句を言われるまえに、自主的に構造調整をしようとさかんに主張した。それが、国際経済を安定させるための日本の任務であり、その結果、日本は豊かになるというわけである。

「内外価格差の解消、労働時間の短縮、その他もろもろの規制緩和といった、いわゆる日本経済の構造調整は、長年の国内的課題である国民生活の豊かさの実現をはかるものである。その意味で今日の日本経済は、政策選択という点でこれ以上ない幸運な立場にあるとも言える」

ついに、93年9月6日付けの日本経済新聞の社説では、日米構造協議でのアメリカ側の主張をあたかも自社の社是であるかのように論じて、次のように述べるにいたる。

「日本経済は内需低迷で経常黒字が膨らみ、それが円高につながり、自動車、電機など基幹産業の不況を招くという悪循環に陥っている。円高のメリットが生かされない一方で、円高が基幹産業の実力を上回るところまで進行した。そうした仕組みを断ち切るには、日本経済を思い切って内需主導型、生活重視の構造に変えるしかない」

この時期、もっとも人気が高かったエコノミストが、野村総合研究所のリチャード・クー氏だった。クー氏も日米構造協議でのアメリカ側の主張をそのまま支持して、すでにバブル崩壊で混乱をきわめる時期に「日本は構造を変えて、内需を拡大せよ」と盛んに論じた。

たとえば『週刊東洋経済』93年10月23日号でクー氏は論じている。
「日本国内の論調が1ドル105円を割ったあたりからガラリと変わり、‥‥日本の経常黒字こそ円高の原因だという捉え方に変わってきた‥‥。さらに1ドルが100円近くになると、日本経済は規制緩和が必要だ、市場開放だという声が急激に増えていった。これらの主張は米国のこれまでの主張と同じであり、このような声が1ドル100円割れでいっそ大きくなることは、米国にとっても大いに結構なことである」

こうした経常黒字が円高の原因で、それは規制緩和と市場開放で解消すると言う主張は、必ずしも経済学的に厳密な議論とはいえない。少なくとも、リチャード・クー氏のかつてのボスだった元FRB議長ポール・ボルカーの考えとも異なっている。しかし、アメリカの強い内需拡大要求、日本政府の不本意な妥協、経済マスコミのアメリカへの追従のなかで、クー氏の主張は、あたかも現状を適切に説明しているように見えたのである。


JUGEMテーマ:政治



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